量子鍵師 2020 9 6

 多くの人は、量子コンピューターの仕組みが、
わかりにくいと思っているでしょう。
 その仕組みを詳しく理解するには、
物理学の量子論を学ぶ必要があると言われます。
 しかし、理科系の学生でも、
量子論は難しいので苦手だと聞きます。
 確かに、「量子的重ね合わせ」や「確率振幅」は、
一般常識から大きく離れた考え方です。
 時々、見かけるのは、コインを使う説明です。
コインの表を「0」、コインの裏を「1」とすると、
机の上で、コインを回すと、
コインが回っている状態ならば、
「0」でもなく「1」でもない状態です。
つまり、「0」と「1」が共存する状態です。
 そこで、観測すると、
つまり、コインの動きを止めると、
「0」か「1」の状態が確定します。
 しかし、この説明は、
「確率振幅」の説明にはなっていないかもしれません。
 さて、「ニュートン式超図解 量子論」を見ていたら、
わかりやすい図解がありました。
 大型の金庫というと、鍵はダイヤル式が多いでしょうか。
しかし、ここでは、スイッチ式の金庫を考えます。
 スイッチとは、壁にある電気のスイッチをイメージしてください。
このようなスイッチが金庫に10個ついているとします。
 スイッチOFFが「0」、スイッチONが「1」だとすると、
金庫を開ける鍵の組み合わせは、
「0000000000」から始まって、「1111111111」まで、
2の10乗、つまり1024通りあります。
 従来型のコンピューターでは、
1024回分の計算が必要となりますが、
量子コンピューターでは、重ね合わせの状態のまま計算すれば、
1度に1024パターンのすべてについて計算したことになります。
 もちろん、スイッチは、「量子スイッチ」という仮定です。
量子スイッチは、「ON」と「OFF」の両方の状態を取ることができます。
 つまり、量子スイッチの状態では、
10桁分の「0」と「1」が重なり合った状態を取ることができるのです。
要するに、「量子スイッチ」は、ONとOFFを同時に表現できる量子ビットです。
「10個の量子スイッチは、1024個のすべてのパターンを同時に表現しています。
金庫の取っ手をゆっくり回すと、量子スイッチに変化が生じます。
 最初は、均等に上と下を向いていた各スイッチが、
少しずつ上か下に偏ります。
 取っ手を最後まで回すと、
各スイッチがはっきりと上か下を向き、正解のパターンを示すのです」
(引用、以上)

量子ネイティブ 2020 3 1

書名 驚異の量子コンピューター
著者 藤井 啓祐  岩波書店

 量子コンピューターの実現には、
量子論を当たり前だと考える世代が、
つまり、「量子ネイティブ世代」が多数派にならないと、
その実現は、難しいかもしれません。
 物質は、粒子であり、波でもある。
もちろん、目の前にあるリンゴは巨大なので、
量子の性質を見ることはできませんが、
電子のような微小なサイズになってくると、
量子の性質が現れてくるのです。
つまり、電子が粒子になったり、波になったりするわけです。
不思議なことに、観測すると、粒子になります。
 たとえば、電子銃で電子を壁に向けて発射すると、
電子が波のように広がり、
壁に衝突すると、粒子になるかもしれません。
つまり、「壁に衝突する」と「観測する」は同じ意味です。
 このような不思議な世界を理解するのは、
古典物理学を学んだ私たちには無理があるかもしれませんが、
やがて、そういう世界を当たり前だと考える世代が台頭してくるでしょう。
つまり、「量子ネイティブ世代」の台頭です。
 もうひとつ不思議な話を書きましょう。
それが、「確率振幅」という考え方です。
量子力学は、「確率振幅」によって記述されます。
 「確率振幅」とは、数学の「確率」とは違います。
確率振幅とは、確率になる前の「確率の卵」のような存在です。
 たとえば、電子のような「量子的な粒子」を箱に入れたとします。
箱の中では、粒子は、波のような広がりになっているかもしれません。
 そこへ仕切り板のようなものを入れても、
粒子が右の部屋にいる状態が0.6、
左の部屋にいる状態が0.8という確率振幅になるかもしれません。
 「0.6+0.8」は、1.0にはなりません。
つまり、60%+80%は、100%にはなりません。
 なぜかというと、量子の性質として重なり合っているからです。
これは、量子の世界における「曖昧な重ね合わせ状態」を数値で表現するためです。
 もちろん、観測すれば、収縮して、粒子となりますので、
数学の確率の世界となります。


































































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